今までの仕事|遠藤泰人 + 空間スタジオ

鶴牧西公園歩道橋
土木学会デザイン賞 2014 優秀賞受賞しました
土木学会デザイン賞のサイトもご覧ください。(的を得た)講評がのっています。
http://www.jsce.or.jp/committee/lsd/prize/2014/works/2014n1.html

この賞は「時間の蓄積に耐えるデザイン」も評価の視点となっています。「いくら古くても良いが、受賞者が生きている間に応募してくれ」と言うことでした。それではと思い切って25年前にデザインした歩道橋を応募してみましたところ、幸いにも優秀賞を受賞しました。

土木構造物をトータルにデザインしたのはこの歩道橋のみです。はじめての土木のデザインということで、考えに考え、チャレンジをしつつ、やりすぎないように押さえながら、デザインした結果です。

土木構造物、アーバンデザイン、ランドスケープデザイン、建築、それらの大規模なものが受賞作として並ぶ中に、本当に小さな歩道橋が紛れ込んで受賞しました。こういう仕事が評価された事を嬉しく思います。
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単純な平面形なのですが、大降りな螺旋状のスロープの形状が空間を抱き込むかたちで穏やかな印象を与えています。この歩道橋の為にデザインしたハイポール照明が景観を引き締めています。適切な植栽を管理してくださっている公園管理者に感謝。
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               小田急多摩線終点の唐木田駅の近くです→ Google map
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高台にある高層住宅街から、道路をまたいで、反対側の公園に動線を連続させる機能をもっています。その動線は小学校の通学路であり、この橋の螺旋形状の延長で円を描いて公園の中の階段に連続して下って行きます。開通以来24年間、ここを通って通学した沢山の子供(と元子供)達の記憶に残っていてくれていればうれしいと思います。

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下の道路からの視点(特に車からの視点)に対しては、橋を出来るだけ薄く見えるようにしています。景観的にその方がスッキリするという判断です。地覆と呼ばれるパラペット状の立ち上がりがあるので、建築ほどは端部を薄くは出来ませんが、適切な寸法かとも思っています。更に桁自体も出来るだけ小さくし橋面の張り出し(キャンチレバー)部分を多くしています。

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橋台  巾の広い橋台(橋が載る部分)は鈍重な印象を与えがちなので、巾の狭い橋台とすることをチャレンジしました。しかし橋台の左右は違う状況でしたのでちょっと悩んだことを覚えています。片側は階段、反対側は法面です。従って左右でまったく違う処理の仕方をしました。この巾の狭い橋台がこの橋の景観上の特徴の一つだと思っています。

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「神は細部に宿りたまう」のですから、当然部分のデザインにもこだわりました。親柱(橋の端部にある、シンボル的な造形物)と高欄(欄干の事)それにつく手摺、そして照明ポールなどです。(一番下に図面他の資料をつけておきます。)

親柱 往々にして、親柱と高欄とは無関係にデザインされますが、この橋では親柱と高欄に連続感を持たせようと考えました。最終的には一体のデザインとなっています。ラステンバーグ産の安価な黒御影の板を組み合わせた構成とし、仕上げはバーナーと本磨きの2種類を使っています。そこに高欄のトップレールを少し浮かせて載せ、高欄と親柱のデザインの一体化にチャレンジしました。

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高欄 アルミ鋳物製の太いトップレールと繊細なバラスター(手摺子)の構成で、高欄をデザインしています。
下の道路からの直交の視線にたいしては、トップレールが桁から浮いた一本のラインに見える事を意図し、トップレールはかなり太い半円型としています。バラスターは橋上の歩行者の進行方向の視点に対しても透過性能が欲しいと思い、6ミリ厚の板を組み合わせた形で隙間を明けながらデザインしています。

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手摺 螺旋部には手摺が取り付けられています。鋳物の見付け25ミリのバラスターにハンドレールを取り付けるのは至難の業かと思いましたが、ほぼ図面通りに取り付けられています。施工者に感謝です。

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ハイポール照明  歩道橋全体のデザインを補強する要素としてハイポール照明はデザインされました。灯具を支える腕木を三角形の板とし、丸穴をあけているだけですがどうでしょうか。尚、将来のメンテナンスの事を考え、既成の灯具を用いてデザインしています。

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